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脳ドックや別の検査で異常を指摘され、「脳血管撮影という検査を受けましょう」と言われる。そのとき、多くの方が真っ先に思うのは、「痛いのだろうか」「怖い検査なのだろうか」ではないでしょうか。カテーテルという言葉に、身構えてしまう方も少なくありません。
この記事では、脳血管撮影とは何かを、その不安に正面から答えるかたちで説明していきます。カテーテルを入れるところから、検査後の安静まで、体に何が起こるのか。痛みが出る場面やリスクも含めて、順にお伝えします。
脳血管撮影とは——血管の「地図」を精密に描き出す検査
脳血管撮影とは、足の付け根や手首の血管からカテーテルを入れ、主に首の動脈まで進めて、そこから造影剤を流し、脳の血管を撮影する検査です。正式には 脳血管造影(カテーテル検査)。また、英語にちなんで 「アンギオ」 という通称でも呼ばれます。
血管そのものは、レントゲンにはほとんど写りません。そこで、X線に写る造影剤を血管に流し込みます。すると、造影剤の通り道として、血管の形がくっきりと浮かび上がるのです。つまり、手に入るのは、脳の血管の精密な「地図」。
そして、この地図から、脳動脈瘤(血管のコブ)や、血管の狭まり・詰まり、脳動静脈奇形といった病気の様子を、細かく読み取ります。特に、血管の立体的な形や、血液の流れる向き・速さまで見えるのが、この検査ならではの強みです。
CTやMRIとは何が違うのか
「血管を調べるなら、CTやMRIでもよいのでは」と思う方もいるでしょう。実際、まずは体への負担が小さいCTやMRIで血管を調べることがよくあります。CTで血管を映す検査をCTA、MRIで映す検査をMRAと呼びます。
では、脳血管撮影との違いはどこにあるのでしょうか。いちばん大きな差は、情報のくわしさにあります。
- CTA・MRA:カテーテルを使わず、体への負担が小さい。まず全体像をつかむのに向く
- 脳血管撮影:カテーテルを使うぶん負担はあるが、血管の細かな形や、時間とともに変わる血流を捉えられる
このように、両者は優劣ではなく役割の違いです。そのため、CTやMRIで「もっとくわしく見たい」となったとき、脳血管撮影の出番になります。CT・MRIについては「脳のCT検査とは何か」「脳のMRI検査とは何か」でくわしく解説しています。
検査の流れ——実際にどう進むのか
では、脳血管撮影は実際にどのように進むのでしょうか。大きな流れは次のとおりです。
- 準備:多くは局所麻酔で行います。カテーテルを入れる部分(足の付け根か手首)の周りにだけ、麻酔をかけます
- カテーテルを入れる:血管に細い管を差し込み、X線で位置を確かめながら、主に首の動脈まで進めます
- 造影剤を流す:目的の血管にカテーテルを置いたら、造影剤を注入して撮影します
- 撮影:DSAという方法で、余分な骨などを消し、血管だけをくっきり映します
- 終了・安静:管を抜き、刺した部分を押さえて止血し、しばらく安静にします
では、多くの方が気にする「痛み」についてお答えします。カテーテルが血管の中を進むとき、痛みはほとんどありません。ただし、局所麻酔の注射では、針を刺す痛みや、しみる感じがあります。また、造影剤を流した瞬間に、顔や頭が「かっと熱くなる」感じがすることはあります。とはいえ、それも一時的なもの。
入院は必要か、リスクはあるのか
脳血管撮影は、短期間の入院で行うことが一般的です。なぜなら、検査そのものは1時間前後のことが多いものの、そのあと、刺した部分からの出血を防ぐため、数時間から半日ほど安静にする必要があるからです。日帰りで行う施設もあり、そこは施設や患者さんの状態しだい。
気になる合併症についても、正直にお伝えします。脳血管撮影は、重い合併症が起こることは、まれです。ただし、ゼロではありません。起こりうるものとしては、次のような点が挙げられます。
- 造影剤に対するアレルギー
- カテーテルを刺した部分の内出血・あざ
- ごくまれに、血管の中で血栓ができ、脳梗塞を起こすこと
だからこそ、「なぜこの検査が必要か」を納得したうえで受けることが大切です。医師は、検査で得られる情報と、わずかなリスクとを天秤にかけ、本当に必要なときに提案します。気になる点は、遠慮なく主治医に尋ねてください。
まず、血管の地図を手に入れる
私は、脳血管撮影を「治療の設計図を描く時間」だと考えています。撮影するときに見ているのは、いま第一候補にしている治療に必要なものだけではありません。もし治療をするなら、この方にはどんな方法が考えられるか。それぞれに必要な情報を、すべて確かめておくようにしています。
コイル塞栓術等の脳血管内治療にも、方法は複数あります。クリッピングやバイパス・トラッピング等の開頭手術では、方法の違いに加えて、病変に近づく道も一つではありません。こぶの向きや周りの血管との位置関係によって、どの道から入るかが変わる。私は両方の治療を自分の手で行うので、撮影中から、それぞれの方法で治療を進める場面を思い浮かべています。
どの方法を選ぶとしても、「もしものことが起きたとき」に必要になる情報まで、撮影の段階で確かめておく。それが、私の脳血管撮影の基準です。
予定を変える場面まで、画像から考える
たとえば脳動脈瘤なら、こぶの根元から分かれる細い枝の位置を見ます。こぶへの血流は止めても、その枝へ流れる血液は止めたくない。クリップをどこにかけるか、コイルをどこまで詰めるか。その判断は、この枝の位置しだいで変わります。予定した方法では枝を守れないと分かったときに、何に切り替えるか。それを考えるのにも、同じ位置関係が要るのです。
血管内治療なら、カテーテルを進める道の曲がり具合も確かめます。曲がりが強いと、予定した器具が進みにくかったり、先端が安定しにくかったりする。あらかじめ道を見ておけば、器具や進め方を考え直すことになっても、慌てずにすみます。
バイパスで血液の迂回路を作る可能性があるなら、その材料になる頭皮の血管の太さや走り方まで確かめる。病変からは離れた場所ですが、別の道から脳へ血を送ることになったとき、その血管が使えるかどうかは、治療の前に知っておきたいのです。
治療するか、見守るかを話すために
こうして方法ごとに必要な情報をそろえると、選択肢を公平に並べて話せます。一つの方法についてだけ詳しく調べて、ほかはよくわからないまま比べるのでは、患者さんも選びようがありません。それぞれで何ができ、どこに難しさがあるのか。途中で方針を変えることになったら、どんな備えがあるのか。私はそこまで踏まえて、治療を安全に組み立てたいのです。
そのうえで、経過観察と治療を比べます。こぶを見守る間の破裂リスクと、治療で負うリスク。この二つを並べるのに、「治療には危険もあります」という大まかな説明では足りません。この方の血管なら、どの方法の、どこが難しいのか。そこまで具体的につかんでいてはじめて、治療を勧める理由も、いまは見守る理由も、正確に語れると考えています。
検査の前には、痛みや怖さについての説明とあわせて、撮影で何を確かめ、それが次の判断にどうつながるのかもお伝えします。得られた画像を、患者さんが選べる治療の話へつなげる。それが、私の考える筋の通った医療です。
よくある質問
脳血管撮影は痛いですか?
カテーテルが血管の中を進むときの痛みは、ほとんどありません。ただし、刺す部分に局所麻酔をするときは、針の痛みや、しみる感じがあります。また、造影剤を流したときに顔や頭が熱く感じることがあります。感じ方には個人差があります。
脳血管撮影では、どのくらい入院しますか?
短期間の入院で行うことが一般的です。検査後、刺した部分の止血のために数時間から半日ほど安静にする必要があるためです。日帰りで行う施設もあります。ご自身の場合は主治医にご確認ください。
CTやMRIで血管を調べるのと、何が違うのですか?
CTやMRIは体への負担が小さく、まず全体像をつかむのに向いています。一方、脳血管撮影はカテーテルを使うぶん負担はありますが、血管の細かな形や、時間とともに変わる血流を捉えられます。目的に応じて使い分けるのが一般的です。
おわりに
脳血管撮影とは、カテーテルと造影剤で、脳の血管の「地図」を精密に描き出す検査。カテーテルと聞くと身構えてしまいますが、管を進めるときの痛みは、ほとんどありません。この一枚の地図が、その後の治療の質を大きく左右します。
「この検査を受けるべきか迷っている」——それなら、受ける前に、納得できるまで質問してください。何のために、何を調べる検査なのか。ご自身の言葉で説明できるようになるまで、お付き合いします。
関連する検査や治療については、「脳神経外科の道具箱」の関連記事(脳のCT検査・脳のMRI検査・コイル・コイル塞栓術とは何か)でも解説しています。
