脳のMRIとは何かを解説する図解——筒型のMRI装置と脳の輪切り画像

脳のMRIとは?仕組み・CTとの違い・わかることを脳神経外科医が解説

脳MRIとは、強い磁石と電波を使って、脳の中をあらゆる方向から輪切りにして写し出す検査です。放射線は一切使いません。それでいて脳梗塞や脳腫瘍、脳動脈瘤まで細かく調べられる。脳のMRIとは何か、CTとどう違うのか、脳神経外科医の井上靖章が、患者さん・ご家族にわかりやすく解説します。

頭痛やめまいで受診したとき、あるいは脳ドックを受けるとき、「では、MRIを撮りましょう」と言われることがあります。そのとき多くの方の頭に浮かぶのは、「痛いのかな」「何がわかるのかな」という不安。

先に答えると、痛くはありません。では、何がわかるのか。この記事では、脳のMRIとは何かを、仕組みから順に見ていきます。

脳MRIとは、磁石と電波で脳を「輪切り」にする検査

MRIとは、「磁気共鳴画像」という意味の英語の略。大きな筒の中に入り、強い磁石と電波を使って、体の中の様子を画像にします。

いちばんの特長は、放射線をまったく使わないことです。そのため、くり返し受けても被ばくの心配がありません。さらに、脳をあらゆる方向から輪切りにして見られます。つまり脳の細かな構造や、わずかな異常まで、立体的にとらえられる。ごく小さな脳梗塞や動脈瘤を拾い上げられるのは、この解像度あってのことです。

CTとの違いは、どちらが優れているかではない

脳の検査には、MRIのほかにCTがあります。よく「どちらが優れているのか」と聞かれます。しかし、これは優劣の問題ではありません。むしろ、得意なことが違うだけなのです。

  • CT:X線を使う検査。数分で終わり、出血や骨の状態を見るのが得意。救急の現場で活躍する
  • MRI:磁石を使う検査。20〜40分ほどかかるが、脳梗塞の早期や脳腫瘍、血管の様子を細かく見られる

たとえば、頭を強く打った直後や、急な激しい頭痛。まずCTで出血をすばやく確認します。一方、脳ドックで脳梗塞や脳動脈瘤をていねいに調べたいとき、力を発揮するのはMRI。このように、2つは目的に応じて使い分けます。

脳MRIで何がわかるのか

脳のMRIでは、脳梗塞から腫瘍、血管の異常まで、幅広い病気の手がかりが得られます。代表的なものを挙げてみましょう。

  • 脳梗塞:発症して間もない脳梗塞も、特殊な撮り方(拡散強調画像・DWI)で白く浮かび上がる
  • 脳腫瘍:腫瘍の場所・大きさ・性質の手がかりがわかる
  • 脳動脈瘤・血管の異常:造影剤を使わずに血管だけを写すMRAという方法で調べられる
  • 古い小さな出血や慢性の変化:年齢による白質の変化や、微小な出血の跡も見つかる

このように、MRIは「脳のいまの状態を、まるごと健康診断する」ような検査だといえます。

検査の実際は、筒の中でじっとしている時間

では、実際の検査はどのように進むのでしょうか。MRIでは、トンネルのような筒の中に、20〜40分ほど横になっています。撮影中は「ガンガン」「カンカン」という大きな音がします。これは、磁石が働くときの音で、体に害はありません。

きれいな画像を撮るには、検査中はできるだけ動かないこと。これが大切です。また、病気によっては、血管や腫瘍をはっきりさせるために造影剤(ガドリニウム)を使うこともあります。

受ける前に必ず伝えてほしいこと

MRIが使うのは、強い磁石。だからこそ、金属に関わるものは、事前の確認がとても大切です。次のようなものがある方は、必ず申し出てください。

  • 心臓ペースメーカーや、体内に植え込んだ電気機器
  • 手術で入れた金属(多くは問題ありませんが、種類の確認が必要)
  • 過去のけがなどで体内に残った金属片

また、狭い筒に入るため、閉所が苦手な方も、遠慮なく前もってご相談ください。多くの場合、対応の方法があります。

「撮る」より「読む」——私がMRIを大切にする理由

脳神経外科医にとって、MRIはもうひとつの目です。私は手術の前、患者さんのMRIを、何度も何度も読み込みます。腫瘍や動脈瘤が、どの神経の近くにあるか。どの血管をよけて進めば、安全にたどり着けるか。暗い部屋でモニターに向かい、断面を一枚ずつ送りながら、頭のなかで手術の道筋を何度もたどる。手術はメスを持つ前から、画像の中ですでに始まっているのです。

MRIは、ただ撮れば終わりではありません。そこから何を読み取るかに、術者の経験が出るんです。

だからこそ、私が大切にしているのは、「撮る」ことより「読む」こと。同じ一枚の画像でも、見る人によって読み取れる情報の量はまるで違います。その一枚に隠れた手がかりを、ひとつも見逃したくない。私はいつも、そう思いながら画像に向き合っています。

もうひとつ、お伝えしたいことがあります。脳ドックのMRIで、たまたま症状のない脳動脈瘤が見つかることがある。驚かれる方も多いのですが、これはむしろ幸運なこと。なぜなら、破裂する前に見つかれば、経過観察・開頭手術・血管内治療といった選択肢を落ち着いて選べるからです。MRIは、こうして「知らないうちの危険」から私たちを守ってくれる検査でもあります。

よくある質問

MRIは痛いですか?

痛みはありません。筒の中で横になっているだけです。ただし大きな音がするため、耳栓やヘッドホンを使います。

検査にはどのくらい時間がかかりますか?

撮る範囲や目的にもよりますが、おおよそ20〜40分です。造影剤を使う場合は、もう少し時間がかかります。

体に金属が入っていると、MRIは受けられませんか?

種類によります。多くの手術用金属は問題ありませんが、ペースメーカー等は確認が必要です。必ず事前にお伝えください。

おわりに

脳のMRIとは、磁石と電波で脳の中を細かく写し出す、放射線を使わない検査です。脳梗塞から脳腫瘍、脳動脈瘤まで、多くの病気の早期発見につながります。「MRIを撮りましょう」と言われても、どうか怖がらないでください。それは、あなたの脳をていねいに調べるための、心強い味方です。

MRIに関わる検査については、「脳神経外科の道具箱」の今後の記事(CT・MRA・FLAIR・MRI拡散強調画像(DWI)とは)でも、順次くわしく解説していく予定です。

参考リンク:日本脳神経外科学会MRI(Wikipedia)

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開頭手術と血管内治療を駆使する脳神経外科医 井上靖章

井上靖章(いのうえ やすあき)

脳神経外科医・医学博士。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳神経血管内治療学会専門医、日本脳卒中学会専門医。京都大学医学部卒業。米国メイヨークリニックでの研究研修、ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院フェローを経て、湖東記念病院 脳神経外科部長。開頭手術と脳血管内治療の両方を自分の手で行う「二刀流」の脳神経外科医。治療方針は、開頭手術・脳血管内治療・経過観察のすべてを並べて示すことを原則としている。

プロフィール・実績の詳細 / 「脳神経外科の道具箱」の記事一覧 / X(@yasuaki_neuro)

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