頭のCTとは何かを解説する図解——ドーナツ型のCT装置と脳の輪切り画像

頭のCTとは?MRIとの違い・被曝・わかることを脳神経外科医が解説

頭部CTとは、X線を使って脳や頭の中を輪切りにして写し出す検査です。とくに出血をすばやく見つけるのが得意で、救急の現場で真っ先に選ばれます。MRIとどう使い分けるのか、被曝は心配ないのか。頭のCTとは何かを、脳神経外科医の井上靖章が、患者さん・ご家族にわかりやすく解説します。

急に激しい頭痛におそわれたとき、あるいは頭を強く打ったとき。救急外来に運ばれると、多くの場合まず「CTを撮りましょう」と言われます。ご本人やご家族の胸には、「何を調べているのだろう」「放射線は大丈夫だろうか」という不安がよぎります。

この記事では、頭のCTとは何かを、仕組みから順に説明していきます。読み終えるころには、「CTを撮りましょう」という一言が、少し違って聞こえるはずです。

頭のCTとは——X線で脳を「輪切り」にして見る検査

CTとは、「コンピュータ断層撮影」を意味する英語の頭文字をとった呼び名です。ベッドに寝た状態で、ドーナツのような装置の中を通ります。そしてX線をさまざまな角度から当て、コンピュータが集めた情報を組み立てて、脳の断面を画像にします。

いちばんの特長は、とにかく速いことです。撮影そのものは数十秒から数分で終わります。一刻を争う救急の場面で大きな力を発揮し、出血や骨の状態も、はっきりと写し出せます。CTは、「今すぐ、危険な出血がないかを確かめる」のに最も向いた検査なのです。

MRIとの違い——どちらが上、ではなく「役割が違う」

脳の画像検査には、CTのほかにMRIがあります。よく「どちらが優れているのか」と聞かれます。しかし、これは優劣の話ではありません。CTとMRIは、受け持つ場面が違うのです。

  • CT:X線を使う検査。数十秒〜数分で終わる。急な出血や骨折、頭のけがを見るのが得意。救急の第一手
  • MRI:磁石と電波を使う検査。20〜40分かかるが、発症したばかりの脳梗塞や、脳腫瘍・血管の様子を細かく見られる

たとえば、突然の激しい頭痛では、くも膜下出血がないかをまずCTで確かめます。一方、脳梗塞をごく早い段階でとらえたいときには、MRIの特殊な撮り方(拡散強調画像・DWI)が力を発揮します。このように、2つを目的に応じて使い分けるのが、いまの脳神経外科の基本です。

頭のCTで何がわかるのか

頭のCTでは、とくに緊急性の高い病気の手がかりが、すばやく得られます。よく問題になるのは、次の4つです。

  • 脳出血:脳の中の出血は、CTで白く明るく写る。発症直後からはっきりわかる
  • くも膜下出血:脳動脈瘤が破れて起こる出血も、早い段階でとらえやすい
  • 頭のけが:頭蓋骨の骨折や、打撲による頭の中の出血を確認できる
  • 大きな脳梗塞や脳のむくみ:時間が経った変化や、脳のはれ具合を見る

このようにCTは、「命に関わる異変を、まず取りこぼさない」ための検査だといえます。だからこそ、救急の現場で真っ先に選ばれるのです。

造影CTという方法——血管をくわしく見る

ふつうのCTに加えて、造影剤という薬を血管から注射して撮る方法もあります。これが造影CT。造影剤が血管を白く浮かび上がらせるため、脳動脈瘤や血管の詰まり、腫瘍への血の流れなどを、よりくわしく調べられます。

ただし、造影剤はまれにアレルギーを起こすことがあります。そのため、ぜんそくや腎臓の持病、以前に造影剤で具合が悪くなった経験がある方は、検査の前に必ずお伝えください。

被曝が心配な方へ——正しく知れば、過度に恐れなくてよい

CTはX線を使うため、「被曝は大丈夫ですか」という不安の声をよくいただきます。これはとても自然な疑問です。ここは、正確にお伝えしたいところです。

たしかにCTには、レントゲンより多めの放射線を使います。しかし、1回の頭部CTで受ける量は、健康にただちに影響が出るような大きさではありません。むしろ大切なのは、「その検査で得られる利益」と「わずかな被曝」を天秤にかけることです。

たとえば、命に関わる出血を見逃さないためであれば、CTを撮る利益のほうがはるかに上回ります。一方で、必要のない検査をむやみに重ねないことも重要です。医療者は、本当に必要なときに、必要なだけ撮るよう努めています。心配なことは、遠慮なく主治医にたずねてください。

一枚のCTが、次の一手を決める

救急で運ばれてきた患者さんの、最初の一枚。私にとってCTは、「次に何をすべきか」を決める分岐点です。その画像に出血があるのか、ないのか。あるとすれば、どこに、どれくらいの大きさで広がっているのか。一枚のCTを読んだ数秒のうちに、頭の中では次の手順が組み上がっていきます。すぐ手術場に向かうのか、まず経過を見るのか。判断の起点は、いつもこの一枚です。

CTは、派手な道具ではありません。けれど救急の夜、この一枚がなければ、私たちは次の一歩を踏み出せない。それくらい大事な、最初の道しるべなんです。

とくに、突然の激しい頭痛で運ばれた方のCTを見るときは、いつも以上に集中します。脳動脈瘤が破れて起こる、命に関わる出血。あのくも膜下出血を、絶対に見逃さないためです。ほんのわずかな白い影も、私は見過ごさないよう目をこらします。そして出血が見つかれば、開頭手術(クリッピング)と血管内治療(コイル塞栓術等)のどちらで治療すべきか、続く検査とあわせて考えていきます。最初の一枚を正しく読むことが、その後のすべての判断につながっているのです。

CTの限界にも、触れておかなければなりません。CTは速いぶん、細かな部分ではMRIに譲る場面もあります。だからこそ私たちは、CTとMRIを一組の道具として使い分けます。速さのCT、精密さのMRI。両方の長所を組み合わせてこそ、脳の中を正しく見通せる。私はいつも、そう考えて画像に向き合っています。

よくある質問

頭のCT検査は痛いですか。時間はどのくらいですか。

痛みはありません。装置の中で、じっと横になっているだけです。撮影そのものは数十秒から数分で終わるのが一般的です。造影剤を使う場合は、もう少し時間がかかります。

CTの被曝は、体に害はありませんか。

1回の頭部CTで受ける放射線量は、ただちに健康に影響が出るような大きさではないとされています。必要な検査から得られる利益のほうが大きいと考えられる場合に行います。ご心配な点は主治医にご確認ください。

CTとMRI、どちらを受ければよいのですか。

目的によって使い分けます。急な出血や頭のけがを速く調べたいときはCT、早期の脳梗塞や腫瘍を細かく見たいときはMRIが選ばれるのが一般的です。どちらが適しているかは、症状に応じて主治医が判断します。

おわりに

頭のCTとは、X線で脳の中を輪切りにして写し出す、速さにすぐれた検査です。とくに出血を見つける力が高く、救急の第一手として欠かせません。「CTを撮りましょう」と言われたら、それだけ真剣に調べようとしている合図だと受け取ってください。あなたの身に起きている異変を、いち早くとらえるための第一手です。

画像検査については、「脳神経外科の道具箱」の関連記事(脳のMRIとは何か)でもくわしく解説しています。また、詰まった血管の治療については 血栓回収とは何か もあわせてご覧ください。脳血管撮影(カテーテル検査)などについては、今後の記事でも順次くわしく取り上げていく予定です。

参考リンク:コンピュータ断層撮影(Wikipedia)日本脳卒中学会

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開頭手術と血管内治療を駆使する脳神経外科医 井上靖章

井上靖章(いのうえ やすあき)

脳神経外科医・医学博士。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳神経血管内治療学会専門医、日本脳卒中学会専門医。京都大学医学部卒業。米国メイヨークリニックでの研究研修、ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院フェローを経て、湖東記念病院 脳神経外科部長。開頭手術と脳血管内治療の両方を自分の手で行う「二刀流」の脳神経外科医。治療方針は、開頭手術・脳血管内治療・経過観察のすべてを並べて示すことを原則としている。

プロフィール・実績の詳細 / 「脳神経外科の道具箱」の記事一覧 / X(@yasuaki_neuro)

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