滋賀でセカンドオピニオンをお考えの方へ(脳動脈瘤・脳卒中など脳の病気)。言い出し方から、流れ、費用、持ち物まで、湖東記念病院で開頭手術と脳血管内治療の両方を行う脳神経外科医・井上靖章が、受ける側の目線でご案内します。
「主治医に悪い」と思っているあなたへ
セカンドオピニオンという言葉を検索したものの、予約の一歩手前で止まっている。そういう方が、このページには多く来られるはずです。止めているのは、たいてい費用でも距離でもありません。「いま診てもらっている先生に、悪い気がする」。その遠慮です。
外来でも、同じ場面によく出会います。「実は、他の病院で手術を勧められていて……」と、申し訳なさそうに切り出す方。あなたは、何も悪いことをしていません。むしろ、決める前にもう一つの目を求めるその慎重さが、これからのあなたを守ります。
遠慮より、納得
ですから、最初にこれだけ。セカンドオピニオンは、患者さんの当然の権利です。そして、意見を求められた側の医師も、求められて主治医との関係が壊れると考える医師も、いまの医療の世界では、もうほとんどいません。私自身、自分の患者さんが他の病院の意見を聞きに行くことを、歓迎しています。あなたの脳は、あなたのものです。納得してから決めていい。執刀する側から言っても、患者さんが十分に納得して手術に臨んでくださることは、ありがたいことなのです。迷いを残したまま手術室に入る方の硬い表情を、私は何度も見てきました。納得は、治療の一部です。
なぜ私がセカンドオピニオンを歓迎するのか、執刀医としての本音は、別稿「セカンドオピニオン 私の本音」に書きました。このページはその実務編として、滋賀で実際に受けるときの手順を、順番にご案内します。
セカンドオピニオンとは何か — そして、何ではないか
セカンドオピニオンとは、いまの主治医の診断や治療方針について、別の医師の意見を聞くことです。主治医から受け取った検査資料(画像や経過の記録)をもとに、第二の専門家が「私ならこう考える」を示します。
逆に、セカンドオピニオンで「ないもの」も知っておくと、安心して受けられます。まず、転院を勧誘される場ではありません。意見を聞いて、主治医のもとへ帰るのが基本形です。また、診断のやり直しでもありません。原則として新しい検査はせず、お持ちいただいた資料に基づいて意見を述べます。だからこそ、資料の準備が大切になるのです。
ちなみに、脳ドックや健診で初めて異常を指摘され、まだどこの病院にもかかっていない、という方の場合、入口はセカンドオピニオンではありません。通常の外来受診です。「まだ主治医がいない」方は、遠慮なく初診でお越しください。
滋賀でセカンドオピニオンを受けるときの流れ
脳動脈瘤や脳卒中に関して、私の外来(湖東記念病院・毎週火曜午後・完全予約制。病院の専門外来のご案内)でセカンドオピニオンを受ける場合の流れです。他の医療機関でも、おおむね同じ手順が使えます。
五つのステップ
- 1. 主治医に伝える:「セカンドオピニオンを受けたい」と伝え、診療情報提供書(紹介状)と画像データ(CD-ROM等)を用意してもらいます。言い出しにくいときの言葉は、下のFAQに例を載せました。
- 2. 申し込む:湖東記念病院の脳血管障害専門外来の申し込みフォームから、来院かオンラインかを選んでお申し込みください。来院の場合は、病院(TEL 0749-45-5000)へお電話で「脳神経外科・井上の外来でセカンドオピニオンを受けたい」とお伝えいただく形でも構いません。オンラインでのご相談は、フォームからのみ受け付けています。
- 3. 当日:資料と画像を一緒に見ながら、診断の見立て、考えられる選択肢、それぞれの利点と欠点について、私の意見をお話しします。ご家族の同席をお勧めします。
- 4. 持ち帰って、考える:聞いた意見を持ち帰り、主治医と、そしてご家族と、あらためて相談してください。その場で何かを決める必要はまったくありません。
- 5. その後の道はあなたが選ぶ:主治医のもとで治療を続けるのも、あらためて転医を考えるのも自由です。どちらを選んでも、意見書やご報告の形で、主治医の先生にきちんとお返しします。
ご相談の内容は、ご希望に応じて、意見書やお手紙の形で主治医の先生にお返しできます。「他の医師にこう言われた」とあなたの口から説明し直す気まずさは、減らせるのです。
費用と時間のこと
セカンドオピニオンは、病気の治療そのものというより「相談」であるため、原則として健康保険の適用外(自費診療)です。金額と時間枠は医療機関ごとに定められていて、幅があります。湖東記念病院に来院して受ける場合は、病院の規定により1回11,000円(税込)です。来院せずに画面越しで受けるオンラインでのご相談は、次の項に書くとおり、費用はかかりません。
また、診療情報提供書や画像データなど、資料の発行に主治医側の医療機関で費用がかかる場合があります。こちらは主治医側の窓口でご確認ください。
なお、「セカンドオピニオンではなく、通常の外来として診てほしい」という形もあり得ます。紹介状を持って通常の外来を受診すれば、保険診療の枠組みで相談できることも多いのです。どちらの形が合うかは状況によりますので、迷ったらお申し込みの際に率直に聞いてみてください。形式より、あなたが納得できることが大切です。治療費そのものの考え方は解説ページにまとめています。
来院が難しい方へ — オンラインでのご相談
遠方にお住まいの方や、体調や仕事の都合で来院が難しい方のために、湖東記念病院では、画面越しに画像を一緒に見ながら私が意見をお伝えする「オンラインでのご相談」を受けています。
いまの主治医のもとで治療を続けることを前提に、別の専門医の意見を聞いていただくものです。お聞きになったうえで元の病院で治療を受けることは、ごく普通のことです。そのうえで当院での治療をご希望になった場合は、あらためてご来院いただき、健康保険の診療として治療にあたります。費用はいただいていません(無料です)。
流れは、まず画面越しの事前のご相談で、オンラインで進められるかを一緒に確かめます。画面越しでは判断が難しいと考えたときは、ご来院をお願いすることがあります。お申し込みは病院のご案内ページの申し込みフォームから(お電話では受け付けていません)。火曜日以外の平日も、日時は個別に調整できます。画像データの送り方などは、お申し込みのあとにメールでご案内します。
持ち物チェックリスト
当日の相談の質は、持ち物でほぼ決まります。以下を、できる範囲でご準備ください。
- 診療情報提供書(紹介状):主治医が作成する、これまでの経過のまとめです。
- 画像データ(CD-ROM等):MRI・MRA・CT・脳血管撮影など。脳動脈瘤の相談では、これが最も重要です。
- 検査結果・経過のメモ:血液検査の結果や、症状の経過を書いたメモがあれば。
- お薬手帳:現在の内服薬がわかるもの。
- 質問リスト:聞きたいことを、思いつくまま書き出したもの。あとで「聞き忘れた」を残さないための、いちばんの道具です。
- ご家族:持ち物と呼ぶのは失礼ですが、一緒に聞いてくれる人は、何よりの支えです。
もし画像データの用意が難しければ、その旨も予約時にご相談ください。何があって、何がないのか。それがわかるだけでも、当日の相談は組み立てられます。
意見を出すとき、私が決めていること
セカンドオピニオンの場で、私は自分に二つのルールを課しています。
一つ。選択肢を全部、テーブルに並べること。開頭手術(クリッピングやバイパス・トラッピング等)と、脳血管内治療(コイル塞栓術・フローダイバーター・WEB等)、そして経過観察。私は両方の治療を自分の手で行う術者ですから、どの選択肢にも肩入れせず、あなたの瘤や血管にとっての向き不向きで並べられます。
二つ。主治医の方針が最善だと思えば、「最善です」とはっきり言うこと。実際、セカンドオピニオンの結論が「いまの先生の方針で進めてください」になることは、よくあります。それを聞いて、「なんだ、同じか」とがっかりする必要はありません。二人の専門家が同じ答えに辿り着いたという事実は、あなたの決断を支える、いちばん確かな土台になるからです。
ルーツは、米国に
この二つのルールの根っこは、米国にあります。医学生時代にメイヨークリニックへ留学し、のちにハーバードの関連病院で働いた私にとって、患者さんが複数の専門家の意見を聞き比べる光景は、向こうではごく当たり前のものでした。医師の側も、それを前提に資料を丁寧に整えて送り出す。意見を聞き終えた患者さんは、迷いの薄い顔で治療に戻ってくる。意見を重ねることは、医療の質の一部なのだと、あの頃に教わりました。
もちろん、私の意見も絶対ではありません。医学的な判断には、資料だけでは見えない個別の事情が必ずあります。最終的な方針は、主治医との診察の中で、あなた自身が決めていくものです。
セカンドオピニオンで、よく聞かれること
Q. 主治医に、どう切り出せばいいですか?
「家族がとても心配しているので、専門の先生の意見も聞いて、納得して治療に臨みたいんです」。この形が言いやすいと思います。家族を主語にすると、角が立ちません。医師の側は言われ慣れていますから、身構えなくて大丈夫です。それでも面と向かって言いにくければ、「セカンドオピニオン用の資料をお願いしたい」と、受付や看護師さん経由で伝える方法もあります。
Q. 家族だけで話を聞きに行けますか?
ご本人が来られない場合、ご本人の同意書があればご家族だけで相談できる医療機関が多いです(必要書類は施設ごとに異なります)。予約の際に「本人が行けないのですが」とご確認ください。
Q. 意見が主治医と同じだったら、お金の無駄になりませんか?
なりません。「同じ意見だった」は、外れくじではなく、当たりくじです。迷いなく治療に向かえること。それがセカンドオピニオンの成果だからです。
Q. 遠方なので、一回で済ませたいのですが。
ご予約の際に遠方である旨をお伝えください。資料が揃っていれば、一回のご相談で意見をまとめてお渡しできるよう調整します。湖東記念病院は名神高速のICから近く(八日市ICから約15分・湖東三山スマートICから約10分)、京都・名古屋方面からも来やすい場所です。詳しくは滋賀で脳動脈瘤の相談を考えている方へのご案内をご覧ください。
Q. そのまま転院することもできますか?
ご希望があれば、可能です。ただし、セカンドオピニオンは転院を前提とする場ではありませんし、こちらから転院をお勧めすることもありません。主治医の先生への報告と、診療の引き継ぎは、筋を通して行います。
おわりに — 二つ目の意見が、決断を確かにする
脳の治療方針は、人生で何度も出会う類いの決断ではありません。多くの方にとって一度きりの、大きな選択です。遠慮は美徳です。ただ、命と後遺症に関わる決断の場面でだけは、その美徳をいったん、鞄の中にしまってください。
二つ目の意見は、一つ目の意見を消すためのものではありません。あなたの決断を、確かにするためのものです。滋賀でセカンドオピニオンを考えたとき、意見を聞く相手の一人に、私を加えておいてください。火曜午後の診察室で、お待ちしています。
セカンドオピニオンのご予約
ご予約は湖東記念病院(TEL 0749-45-5000)へ、「脳神経外科・井上の外来でセカンドオピニオンを受けたい」とお伝えください。受診前の疑問や、資料の準備についてのご相談は、下のフォームからどうぞ。
